02

強制されれば逆らいたくなるのは人の性か?
押さえつけられれば反発したくなるのは?
人の書いたシナリオなんかに踊らされるほど僕は・・・・・・
僕はお人好しではないことを教えてやる!!!




「出撃?!零号機は凍結中でしょ・・・まさか初号機をつかうつもりなの?!」

黒髪女性が何かわけのわからんことを言っている。

「他に道はないわ。」

やたらと断言口調の金髪女性(偽者)がこれまた絶対無敵に断言した。
けど、そんなことよりも僕は心の余裕を無くしている。

「ちょっと、レイはもう動かせないでしょ!パイロットがいないわ!」

どこかに鏡はないかな?
僕の顔を確かめたいんだけど・・・・・・

「さっき届いたわ。」

事としだいによっては僕・・・自殺も考慮にいれないといけなくなるよ。

「マジなの?」

マジです。

「碇シンジくんあなたが乗るのよ。」

え?何に?話がかみ合ってない?

「綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんでしょ!今来たばかりのこの子には無理よ!」

「座っていればいいわ、それ以上望みません。」

「今は、エヴァと少しでもシンクロ可能と思われる者を乗せるしかないのよ。座っていれば良いわ。それ以上は望みません。」

「ちょっと!!それはあんまりじゃないの!?」

僕を無視して話が進む。

「あれが僕のお父さん?人付き合い苦手そう。ほんとに僕の実父ですか?」

ドォーーンという音がしてこの建物が揺れた。
地震?
パラパラと天井から何かが落ちてくる・・・生き埋めはごめんですよ。

「奴め、ここに気づいたな・・・・・・・」

この地震は人為的なものなのかな?
もしかして今の地震って爆破行為???
それよりも僕の疑問に誰か答えてよ。

「乗るなら早くしろ、でなければ帰れ!!」

「・・・・・・・・・バイバイ。」

何かこれ以上ここにいたらややこしいことに巻き込まれそうだね。
もう手遅れという冷静な判断はここでは無視するに限る。
記憶は・・・そのうちなんとかなるでしょう。

「シンジ君、本当にそれでいいの?!」

黒髪女性が家族の問題に口を挟む。
・・・・・・この人がお父さんの愛人とかだったらそれもいいけど。

「あなたはお父さんの何?愛人かなにかですか?」

「え?そんなわけないじゃない!!そんなに趣味は悪くないわよ!!!」

「なら家族の会話に口出ししないでください。」

一刀両断・・・・・・できたかな?
なぜか金髪女性が真っ赤になって震えているような気がするけど気のせいでしょう。

「冬月、レイを起こしてくれ。」

「使えるのかね?」

「かまわん、死んでいるわけではない。」

「わかった。」

「レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ。」

予備と呼んだね、僕のことを予備と。
本命があるんだったら最初からそれに頼ってよ。

「・・・はい。」

女の子の声が聞こえた。
なぜお父さんたちのやり取りがスピーカーで流れるのか・・・謎だね。

「初号機のシステムをレイに書き換えて!」

金髪女性が再起動したみたいだ。
さて、僕はどうしたらいいんだろう?
帰れと言われてもどこにいったらいいかぜんぜんわからないし・・・・・・

「シンジ君、何の為にここまで来たの?」

自分がシンジかどうかを確かめるため。

「さあ、なんででしょうね。」

「逃げちゃ駄目よ、お父さんから・・・そして、何よりも自分から。」

神妙な顔で言うけど、僕の苦悩なんかわからないんだろうね。
僕もここの人たちの苦悩なんかわからないのと同じで。
移動式の診察台みたいなものの上に包帯だらけの女の子が乗せられてきた。
必殺点滴地獄の刑に処されるほどの重症っぷり。
そんな光景をなぜか見慣れている自分に驚愕する。
しかも、なぜか気持ちが落ち着いてしまう。
重症の人間がいることがまるで当たり前のことのように感じてしまっている。

「全部の事柄に対して全部逃げずに戦える人ってすごいと思うけど、馬鹿だとも思う。要はやらないといけないことを見据えて勝たなきゃいけないところと負けてもいいところをちゃんと理解すること。」

「今は逃げちゃいけないところよ!」

「それは僕が決める!」

子供の喧嘩みたいだね。
ゾクっという感覚が体を通り抜け全力で走る。
直後に振動。
バランスを崩してこけてしまった。
鉄骨が上から降ってくる。
黒髪女性と僕は直撃だね。
短い人生でした。

(光速度、万有引力、プランク定数、取得。自己領域展開)

あれ?頭の中で声がした?
えええ?人が止まってる。
鉄骨も・・・・・・なんで?
しかも心のほうは落ち着いている。
頭では混乱してるのに心は当然のことと受け止めている。
そして心はこう命令する。
早くしろ、と。
走って鉄骨の攻撃範囲から脱出する。
あ、黒髪女性を忘れた。
・・・・・・まあ、いいや。
何か薄情になっちゃっている気もするけどどうでもいいや。

(自己領域展開限界、3600秒間、魔法使用不可)

魔法?
周囲が普通に動き始める。
魔法で時間をとめたって事かな?
物理現象を完璧に無視してる気がするけどその辺はどうなんだろう?
さっきまで僕がいたところにエヴァンゲリオンの腕が僕のいた場所を守るように鉄骨を弾き飛ばした。
破片が少し僕にあたる。
血が出ている。
さっきの場所でおとなしくしていればあの腕に護られたんじゃないかな?
まあ、そんな不確定要素なんかに任せられるほど僕は度胸無いからいいけどさ。

「まさか?!ありえないわ!エントリープラグも挿入してないのよ!動く筈ないわ!!」

本当に信じられないことを見たのか取り乱している。
事実は事実として受け止めたほうが良いと思うんだけどね。

「インターフェースもなしに反応している?!というより守ったの?彼を・・・いける!!って、あれ?」

黒髪女性は自分が護られたんじゃなくて僕が護られたと解釈したようだ。
理由があるのかな?

「・・・・・・・・・足が速いのね。」

そういう問題?

「まあ、いいわ、シンジ君、乗りなさい。」

「嫌です。」

何をいまさら。

「葛城一尉!人類の存亡をかけた戦いに臆病者は無要だ!」

「ほら、お父さんもああ言っていることですし。」

「シンジくん、お父さんにあそこまでいわれて黙って帰るつもり?それでいいの?」

「ええ、いいんですよ、弱い犬には咆えさせておけば。」

どこがどう弱いとか何が強いとかそういう定義なんか知ったこっちゃ無いけどたぶん、お父さんは弱い部類の人間なんだと思う。

「あなたは弱くは無いの?」

「さあ、まだ良くわかりません。」

「なら、ここで戦って強いかどうか試してもいいと思わない?」

「なぜそこまで乗せたがるんです?」

「シンジ君、あなたが乗らなければ怪我をしたレイが、その娘がまた乗る事になるのよ!自分を情けないと恥ずかしいと思わないの?!」

「素人を乗せるくらいなら怪我しててもプロがやるのが普通です。僕が命令する立場でもそうするでしょう。だいたい!お父さんも命令を出したし、他の人たちもそのための準備をしてるんでしょ?納得してないのはあなただけですよ。」

金髪女性はもうレイという子用に書き換えをすると言った。
お父さんも要らないと言った。
なら、僕がここに居る理由なんて無いじゃないか!

「この戦いには本当に世界の命運が掛かっているのよ!」

「なら、なおさら素人には乗ってほしくないって言うのが本当なんじゃないですか?僕じゃなきゃいけないんじゃないみたいだし、それに、あなたですよ。ここに来たばかりの子に動かすのは無理だって言ったのは!」

[・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

やっと黒髪女性の口を封じることができた。
それにしてもまだ作業しているね。
書き換えって時間かかるのか、まだ僕を乗せる気でいるのかどちらかだな。
また衝撃が奔る。
さっきよりもさらに大きい。鉄骨がバラバラと落ちてくる。
奇跡的に全員無事のようだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

[・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・」

何か聞き取りにくい会話がされている。
僕に関することだろう。
舐めているに決まっている。

「サードチルドレンを初号機に乗せて!」

金髪女性がそう宣言した。
サードチルドレン・・・何かの称号かなにかだね、きっと。
つまり僕を示す記号だってことだ。

「大人しくしろよ。」

僕を囲んでいる大人の一人がそんなことを言う。
この人数に囲まれてる子供に大人しくだって?
どう抵抗しろって言うんだ?

「いやです。精一杯抵抗します。」

じりじりと端に追い詰められる。
来なきゃ良かったとすっごく思う。
下は水か・・・・・・
覚悟を決めて後ろに飛ぶ。
死にはしないだろう。
囲んでいた人たちは驚きに動きが止まる。
なぜ余裕で観察できるのかと自分で疑問に思う。
そういうことに`慣れる`ことでもしていたのか?
あれ?反射的に飛び出した人がいる。
しかも間に合ってるし!!
少し重力に引かれたところでみごとにキャッチされてしまった。

「くそ!放せ!放せよ!!」

暴れるが簡単に引き戻される。。
よってたかって僕を拘束して変な筒の中に入れられる。

「出せ!!出せよ!!!」

ドアを叩き続ける。
手から血が出るがかまわない。
抵抗はしないといけないだろう。

『停止信号プラグ排出終了』

『了解、エントリープラグ挿入』

『プラグ固定。終了』

『第一次接続開始』

『エントリープラグ注水』

この筒の中に多量の水を入れてきやがった狂ってやがる!

「水責めの刑か!!こらああ!!殺す気か!!!」

”死ぬ”という単語になんとも言い現せない甘美な響きがあるのが嫌だ。
なぜ憬れる?なぜ死にたいと思ってしまう?嫌だ!
僕はまだ死にたくなんてない!!
シネルキミタチヲドレホドウラヤマシクオモッテイルコトカ

『大丈夫、死にはしないわ。』

死んだら激しく困るよ!
イチオウハシネルケドホロビトイウスクイハアタエラレテイナイ
やめろ!!僕は死にたくないよ!!!
ジブンヲツキトオセルナラシンデモイイッテネ
・・・・・・自分を貫いて死ぬならそれもいいか。
LCLで筒内が満たされる。
血の味がする。
なぜだろう?安心する。
懐かしい。
苦しくならないけど呼吸しているという実感がないのが不安になる。

(接続プログラム発見リンク開始)

『主電源接続』

『全回路動力伝達』

『了解』

『第ニ次コンタクトに入ります。A10神経接続異常なし』

『思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス』

『初期コンタクト問題なし』

『双方向回線開きます』

『初号機、起動』

『シンクロ率91.7%』

『・・・・・・・・・すばらしいわ。予想外ね』

『ハーモニスク、全て正常位置。暴走、ありません』

『よし、いける!発進準備!』

『第一ロックボルト外せ』

『解除確認』

『アンビリカルブリッチ移動開始』

『第2ロックボルト外せ』

『第一拘束具を除去』

『同じく第二拘束具を除去』

『1番から15番までの安全装置を解除』

『内部電源充電完了』

『内部用コンセント異常なし』

『了解。エヴァ初号機射出口へ』

『進路クリア。オールグリーン』

『発進準備完了』

『・・・・・・構いませんね?』

『もちろんだ。使徒を倒さない限り我々に未来はない』

『発進!!』

本当に勝手に話が進んでいく。
本気で抵抗しなくちゃいけないみたいだね。
僕を敵に回したことを後悔させてやる!!!


























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